本稿の主人公はジョン・コルトレーン。
彼が一時的にマイルス・デイヴィス組を離れセロニアス・モンク組にワラジを
脱いでいた頃に作られた初リーダー・アルバム。
この1ヶ月前の録音に『ダカール』(プレスティッジ)と言う作品があるが
そちらはリーダーレス・セッションを後にジョン・コルトレーン名義にして
出し直したもの。
さて、本アルバム。 演奏形態は確かにハードバップだが、生涯の友となる
カル・マッセイ(トランペット)作「バカイ」から始まるプレイのどこからもこのテナーサックス奏者が
ハードバップと言う枠に収まる器ではなかったと言う事が強く伝わってくる。
これは結果論ではない。
「ストレート・ストリート」のひねり具合は、すでに『ジャイアント・ステップス』を予想させる。
「コートにスミレを」のジョン・コルトレーンはまるでフランク・シナトラの歌唱を楽器に移し変えた
ようだ(余談だが、有名な『バラード』は“ジョン・コルトレーン・プレイズ・シナトラ”である)。
マイルス・デイヴィスにしろソニー・ロリンズにせよ、ビル・エヴァンスにせよ
彼らが手がけたバラードにはシナトラ関係のレパートリーが実に多い。
モダンジャズにおけるシナトラの貢献を、どうしてみんな指摘しないのか……。
コルトレーン/ジョン・コルトレーン
コルトレーン/ジョン・コルトレーン に加筆・修正を加え転載。
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